神経管閉鎖障害とは?葉酸の必要性も解説

野菜をもつ妊婦

神経管閉鎖障害の予防に葉酸が妊婦さんに必要とは聞いたけど、「神経管閉鎖障害ってよくわからない」「葉酸との関係は?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか

ここでは、神経管閉鎖障害の症状や原因、葉酸との関係について、柴田産婦人科医院の柴田浩之院長監修の下、解説していきます。

医師が監修

藤東クリニック院長の顔写真

柴田産婦人科医院 院長
柴田 浩之

2003年 柴田産婦人科医院 副院長
2019年 柴田産婦人科医院 院長
https://shibata.or.jp/

神経管閉鎖障害とは妊娠初期に起こる胎児の先天異常のこと

神経管閉鎖過程の変化

神経管閉鎖障害とは、妊娠初期(妊娠4〜12週目頃)に起こる胎児の先天異常のことです。

神経管とは、赤ちゃんの脳や脊髄(せきずい)の元となる重要な管状の器官で、妊娠初期に作られます。

神経管は、形成し始めるときに溝の構造をしており、溝の両側が内側に折りたたまれて接合することで正常な神経管が作られます。この閉鎖が行われなかったり、きちんと閉じられなかったりすることによって起こるのが神経管閉鎖障害です。

厚生労働省によると、日本における発生率は0.06%(1万人あたり6人)程度と言われています。

※参考:神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について

神経管閉鎖障害の種類と症状

神経管閉鎖障害は、神経管が作られるときに起こる、中枢神経系のさまざまな形成異常の総称をいいます。発生場所や症状によって分類され、二分脊椎、無脳症、脳瘤などの種類があります。

二分脊椎

二分脊椎を発症した赤ちゃん

障害の中で最も多いと言われているのが二分脊椎(にぶんせきつい)です。脊椎とは背骨のことで、首から腰あたりまでの長い骨を指します。二分脊椎とは、脊椎がうまく閉鎖されなかった状態のことで、多くの場合、脊椎の一部が二つに分かれていることからこの名がつきました。

二分脊椎には重症度がさまざまあります。軽度の場合、脊椎に欠損がみられますが、脊髄と髄膜は脊椎の中に留まっています。

重度の場合、脊椎の欠損している部分から、脊髄や髄膜が外に飛び出しています。

二分脊椎は腰からお尻にかけての脊椎に発症することが多く、症状はそれよりも低い位置に表れます。主な症状は下半身の運動、知覚、排泄の機能障害などです。重度の場合、さらに頭に水がたまる水頭症や呼吸・飲み込みが上手くできないなどの症状を合併することがあります。

無脳症

無脳症とは、脳の発育が進まないことにより、脳の一部や大半が作られず、欠損している状態のことです。神経管閉鎖障害の中で最も重度なもので、流産や死産、生まれても数日間で生命を維持できなくなる場合が多いとされています。

※参考:栄養研:葉酸の作用(葉酸)

脳瘤

脳瘤(のうりゅう)とは、頭蓋骨の一部がきちんと閉じられず、その開いた部分から脳組織や髄膜が飛び出している状態のことです。日本人は後頭部に発症することが多く、その場合後頭部にコブができます。知的障害・発達障害を含む認知障害や、痙攣発作などの症状が見られることがあり、水頭症を伴うことも多いです。

※参考:Neuroinfo Japan:脳瘤

神経管閉鎖障害の原因

神経管閉鎖障害の原因は多岐にわたりますが、代表的なものは「葉酸」の摂取不足があります。その他にも環境や遺伝によって神経管閉鎖障害のリスクが高くなることがあります。

環境によるもの

薬の服用や、生活習慣病などの環境による原因が考えられます。

  • ・抗てんかん薬の服用
  • ・糖尿病や高肥満
  • ・喫煙
  • ・ビタミンAの過剰摂取

これらが原因でリスクが上がる可能性が考えられます。

遺伝によるもの

人種や地域により、発症率などに違いがあるということから、遺伝による影響も考えられます。

また、葉酸をうまく活用できない体質や、過去に神経管閉鎖障害を持った赤ちゃんを産んだことがある場合なども、リスクが高くなるとされています。

神経管閉鎖障害は妊娠11週からわかる

神経管閉鎖障害は出生前診断で確認できることがあります。
無脳症は妊娠11週から、二分脊椎は16週から検査を通して診断できるようになります。

神経管閉鎖障害の診断方法

神経管閉鎖障害は「エコー検査」「MRI検査」「母体血清マーカー検査」などの検査を通して診断されます。

エコー検査

エコー検査を受ける妊婦

エコー検査(超音波検査)は、形態異常を調べる検査で、人間には聞こえない超音波をお腹に当てて、赤ちゃんの形を調べます。

その際に、画像で体の一部が欠損していることなどがわかり、神経管閉鎖障害と判明する場合があります。

MRI検査

MRI検査

MRI検査は、エコー検査を通して異常が見つかった場合に、もっと詳しく見るために行うことがあります。MRI検査では多角的な画像の作成ができるため、体内部の細かい構造を詳しく見ることができ、より正確な診断が期待できます。

妊娠初期の胎児は外からの刺激に敏感なので、一般的にMRI検査は妊娠14週以降に行われることが多く、主治医と相談をよくした上で実施されます。

母体血清マーカー検査

採血をする妊婦

母体血清マーカー検査とは妊婦さんの血液を採取し、胎児の染色体異常や遺伝子疾患の有無を確かめる検査です。

AFP値などの測定により、神経管閉鎖障害のリスクを確認することができます。母体血清マーカー検査は妊娠15週〜20週に受けることができます。

神経管閉鎖障害の治療方法

神経管閉鎖障害の治療方法は、障害の種類や重症度によって変わりますが、通常は神経管の開いている部分を閉鎖するための手術を行います。

また、二分脊椎における運動、知覚、排泄の機能障害に対しては、根本的な治療方法がなく、継続的なリハビリテーションを通して症状の維持や改善を目指します。

※参考:二分脊椎児に対するリハビリテーションの現況

予防に葉酸の摂取が必要な理由

葉酸が含まれる野菜

欧米諸国では、神経管閉鎖障害の発症率が高かったため、発症リスク低減のため、葉酸との関わりについて多くの研究が行われました。

その結果、葉酸の摂取が、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを下げることが明らかになっており、妊娠初期に葉酸を摂取することで発生リスクが40〜70%低減したという研究結果も出ています。

日本においても、二分脊椎の発症率が増加傾向にあることや、近年の偏った食生活によって、葉酸の摂取に個人差があるということから、妊娠を希望する女性に、葉酸の摂取が呼びかけられています。

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※参考:葉酸の効果や摂取量は?いつからいつまで必要?

※参考:神経管閉鎖障害:葉酸摂取による予防

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