赤ちゃんのアトピー性皮膚炎とは?原因と予防法
アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多くみられる皮膚の炎症を伴う皮膚疾患です。
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎について、予防と対処法についてご紹介します。
助産師が監修
BELTA専属 助産師
立谷 紗耶華
(たちや さやか)
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を慢性的に繰り返す疾患です。皮膚のバリア機能が低下することで、外からアレルゲンなどの刺激が入りやすくなり、炎症を引き起こすと考えられています。
また、かゆみを感じ皮膚を掻くことで症状が悪化するという悪循環に陥ってしまうこともあるので注意が必要です。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の特徴
アトピー性皮膚炎の症状は、「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを慢性的にくり返すのが特徴です。
赤くなる、ブツブツ、ジクジクで液が出る、ボロボロ皮がむける、など症状は様々で、一度に複数の種類の湿疹が現れる場合もあります。また、長引くと皮膚が硬くゴワゴワになっていきます。
アトピー性皮膚炎が乳幼児に多いのは、皮膚の機能が十分に発達していないため、 成人と比べてバリア機能に異常が起こりやすいからと考えられます。
症状が出やすい部分
・乳児期:頭や顔から始まり、体や手足に広がっていく傾向があります。
・幼小児期:首や手足の関節部分にできやすい傾向があります。
・思春期・成人期:頭、首、胸、背中といった上半身にできる傾向があります。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、もともとのアトピーになりやすい体質や、皮膚のバリア機能が低下した乾燥状態に、ダニ・ハウスダスト・食物などアレルギーの原因となるアレルゲン(ダニ・ほこり・食べ物など)が侵入し、炎症やかゆみを引き起こしているものと考えられます。
多様な環境的要因が重なって起こるので原因や症状には個人差があり、症状を悪化させる要因も人それぞれ異なります。
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の診断
アトピー性皮膚炎の診断はいくつかの症状を総合的に考えて行います。それぞれの年齢に応じ、一定期間症状を繰り返している、アレルギー素因などでアトピー性皮膚炎の診断をします。食物アレルギーなどの血液検査を行う場合もあります。
赤ちゃんの場合、一時的な乳児湿疹かどうか、スキンケアや軟膏処置を行いながら経過をよくみて判断する必要があり、根気よくスキンケアと治療を継続することが大切です。心配なことがあれば、かかりつけの小児科、皮膚科を受診することをおすすめします。
アトピー性皮膚炎と乳児湿疹の違い
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は症状が非常によく似ていますが、かゆみはアトピー性皮膚炎の方が強く、湿疹が頭や顔から手足の方へ広がっていき、左右の同じような場所に湿疹が出ることが多いです。また、アトピー性皮膚炎の場合は、状態が悪くなったり良くなったりを繰り返します。
乳児湿疹について詳しくみるアトピー性皮膚炎によって、食物アレルギーになる可能性も
最近の研究で、湿疹がありバリア機能が低下している皮膚から食物が入り込むことによって、食物アレルギーが発症することがわかりました。
食物アレルギーが起こりやすくなる仕組み
本来食べ物を吸収すると、アレルギーを抑制する方向に働き、取り込んで消化する力が備わっています。しかし、皮膚炎(皮膚のバリア機能が低下している)の状態で、肌から食べ物の成分、ダニ、ホコリ、花粉、動物の毛などのアレルゲンが体内に入ってくると、体はそれらを「危険なもの」とみなし、抗体を作って免疫反応が働きます。
抗体ができた状態でその食べ物を食べると、体は危険を排除しようと激しく反応します。これが食物アレルギーの症状です。
アレルギー予防の観点からも、アトピー性皮膚炎の予防・治療をし、皮膚のバリア機能を高めることが重要なのです。
アトピー性皮膚炎と腸内環境の関係
アトピー性皮膚炎は腸内環境によって症状が変化する可能性があるとも言われています。
リーキーガット症候群
腸内環境が悪くなると、体内の毒素や不要物をうまく排出できなくなり、湿疹として肌に出てしまうと考えられています。その為、まだ腸内細菌のバランスが安定していない赤ちゃんは影響を受けやすいと言えます。
また、腸内環境が悪化し、腸壁に傷がつくことで、本来は通過出来ない異物(菌・ウィルス・アレルギー物質など)がすり抜け、血中に流れ出すことでアレルギー症状(アトピー性皮膚炎など)や体調不良の原因となることがあります。これをリーキーガット症候群といいます。
アトピー性皮膚炎の治療の3本柱
アトピー性皮膚炎の治療には、科学的な根拠に基づく有効性が明らかな標準治療として、「①スキンケア」「②薬物療法」「③原因・悪化因子の除去」の、治療の3本柱があります。
1スキンケア
2薬物療法
3原因・悪化因子の除去
①スキンケア
アトピー性皮膚炎の場合、乾燥により皮膚バリア機能が低下しています。正しいスキンケアで皮膚バリア機能を回復させ、維持することで炎症やかゆみを抑えることができます。保湿は炎症が改善してからも、再発を防ぐために続けましょう。
基本のスキンケアは「清潔」と「保湿」
毎日のお風呂で汚れをしっかり落とし、洗った後は必ず保湿をしましょう。洗浄成分が残ると刺激の原因になりますので、石鹸が残らないよう丁寧に洗い流してください。
ただし、ゴシゴシ洗ったり皮脂を落としすぎるのは禁物です。洗いすぎないよう、ベビー用の中でもやさしく洗える洗浄成分と、保湿成分が入っているベビーソープを選ぶのがおすすめです。
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②薬物療法
症状の度合いにより、皮膚の炎症を抑えて痒みを軽減させるステロイド外用薬とタクロリムス軟膏が処方されます。
ステロイド外用剤の使用にご不安を持つ方もいらっしゃいますが、適切に使用すれば副作用はほとんどありません。自己判断で使わなかったり量や回数を変えたりすると、かえって悪化してしまうこともありますので、医師の指示どおりに用量・用法を守って使うことが大切です。
③原因・悪化因子の除去
1つの要因だけでなく、様々な要因が重なり合って起こることが多く、これまでの経過などの情報を総合して判断します。
例えば、ダニやハウスダストの場合は、ダニ対策、部屋の掃除、空気の入れ替えなどに気をつけます。汗も原因になることが多いので、こまめに洗い流したり、ぬれタオルで拭くのも効果的です。
新生児からのスキンケアがアトピー性皮膚炎の予防に繋がる
大切なのは、保湿ケアで肌のバリア機能を高め、外からの刺激を受けにくくすること。最近の研究で、新生児からスキンケアを行い良い状態の肌を保つことで、アトピーの発症リスクは3割以上低下するというレポートもあります。
その他日常生活でできること
室内を清潔に保ち、乾燥を防ぐ
ダニ、ほこり、ペットの毛などで症状悪化につながることがありますので、こまめな掃除で部屋の清潔を保ちましょう。また、空気の乾燥も肌の乾燥につながるため、加湿器などで室内が乾燥しないように注意しましょう。
保冷剤などで冷やす
炎症が起こると熱を持ちます。冷やすことで炎症や熱感を抑え、かゆみや赤みを和らげることができますので、冷たいタオルや、保冷剤をハンカチやタオルにくるんでかゆい場所に当ててあげましょう。また、あらかじめ冷蔵庫で冷やしておいた保湿剤を、塗布してあげるのも気持ちいいでしょう。
爪を切り揃えておく
赤ちゃんの場合は特に、自分で引っかいてしまい肌が傷ついて悪化してしまうことも。常に爪を切っておいたり、どうしてもかきむしってしまう場合はミトンをつけてあげたりするのも良いでしょう。
下着・服は肌にやさしい綿100%を
チクチクする衣類など、かゆみを招くような刺激を避けることが大切です。肌着は通気性・吸湿性の良いものを選びましょう。
お風呂のお湯はぬるま湯で
湯船やシャワーのお湯が熱いと、かゆみがさらに増し、皮脂を奪い乾燥の原因にもなります。少しぬるいくらいが皮膚にとっては適温ですので、冬場でも39℃程度を目安に入ると良いでしょう。
汗とかゆみ対策
夏など暑い時期は特に、汗をかいたらすぐ着替えたり、シャワーを浴びるかタオルなどでふき取り、皮膚を清潔に保つようにしましょう。ただし、洗いすぎは肌が乾燥してしまうので、石鹸の使用は1日1回までにしてください。
プールや海水浴
プールの消毒に用いる塩素、海水は、放置すると皮膚を刺激してしまうので、これらの遊びの後は必ずシャワー、洗浄をしてください。ちょっとした湿疹や傷であれば、プールや水遊びは可能ですが、少しでも刺激を抑えるためには治癒するまで控えることをおすすめします。
アトピー性皮膚炎になっても焦らず、正しいスキンケアを
赤ちゃんのアトピーは、成人のアトピーのように難治性ということは少なく、心身の成長とともに免疫力と肌のバリア機能が高まり、治癒することが多いです。
それまでは湿疹を繰り返しますが、特別な治療法はなく、 先程ご紹介した、治療の3本柱「①スキンケア」「②薬物療法」「③原因・悪化因子の除去」が基本治療です。
ですので、すぐ治らないからといってあせらないこと。親のストレスは赤ちゃんのストレスとなり、かえって治りにくくしてしまいます。のんびりと構えて下さい。
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